ネットワークスペシャリストとは
ネットワークスペシャリスト試験は、独立行政法人「情報処理推進機構」(IPA)が主催し、経済産業大臣が認定する国家試験「情報処理技術者試験」の12ある区分の中の一つです。共通キャリア・スキルフレームワーク(レベル1~7)のレベル4(試験で認定される最高レベル)に位置付けられていて、ITエンジニアとして専門的な知識・技能を有することを国が合格者に対して証明する国家試験です。
現在ネットワーク関係の業務に従事している方はもちろんですが、ネットワークの固有技術からサービス動向まで幅広く精通し、目的に適合した大規模かつ堅牢なネットワークシステムを構築し運用できるネットワークエンジニアやインフラ系エンジニアを目指す方に最適です。
このページの方でもまとめてありますが、この試験区分の歴史は長く、その歴史は昭和63年に創設された「オンライン情報処理技術者試験」まで遡ります。その後試験制度の改定の度に試験名称に若干の変更が加えられますが、ネットワーク技術は今日のIT社会の基盤となるものですから、この試験区分はこれからも存在し続けるでしょう。また昨今、相次ぐ不正アクセスなどからコンピュータシステムや情報を守る技術を持つ技術者の育成のために、ネットワーク技術と表裏一体であるセキュリティ関連の知識も求められる試験にシフトしつつあります。
受験者数ですが、平成13~16年度におよそ年間3万が受験していたのをピークに徐々に減少しており、現在では応募者数2万人、受験者は1万3千人程度になっています。とはいっても、共通キャリアフレームワークのレベル4に位置づけられる高度試験の中では春・秋の2回開催の情報セキュリティスペシャリスト試験に次ぐ人数なので、企業や受験者からの人気は根強いと言えるでしょう。
ネットワークスぺシャリストの対象像
試験要綱においてそれぞれ次のように定義されています。
1.対象者像
高度IT人材として確立した専門分野をもち、ネットワークに関係する固有技術を活用し、最適な情報システム基盤の企画・要件定義・開発・運用・保守において中心的な役割を果たすとともに、固有技術の専門家として、情報システムの企画・要件定義・開発・運用・保守への技術支援を行う者
2.役割と業務
ネットワークシステムを企画・要件定義・開発・運用・保守する業務に従事し、次の役割を主導的に果たすとともに、下位者を指導する。
- ネットワーク管理者として、情報システム基盤であるネットワーク資源を管理する。
- ネットワークシステムに対する要求を分析し、効率性・信頼性・安全性を考慮した企画・要件定義・開発・運用・保守を行う。
- 情報システムの企画・要件定義・開発・運用・保守において、ネットワーク関連の技術支援を行う。
3.期待される技術水準
目的に適合したネットワークシステムを構築・維持するため、次の知識・実践能力が要求される。
- ネットワーク技術・ネットワークサービスの動向を広く見通し、目的に応じて適用可能な技術・サービスを選択できる。
- 企業・組織、又は個別アプリケーションの要求を的確に理解し、ネットワークシステムの要求仕様を作成できる。
- 要求仕様に関連するモデリングなどの設計技法、プロトコル技術、信頼性設計、セキュリティ技術、ネットワークサービス、コストなどを評価して、最適な論理設計・物理設計ができる。
- ネットワーク関連企業(通信事業者、ベンダ、工事業者など)を活用して、ネットワークシステムの構築・運用ができる。
ネットワークスぺシャリスト試験の歴史
- 昭和63年度
- オンライン情報処理技術者試験のとして試験区分が創設される。
- 平成6年度
- 試験制度改正に伴い従来のオンライン情報処理技術者試験が「ネットワークスペシャリスト試験」となる。
- 平成16年度
- 試験事務が「独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)」に移管されたことを契機とする新試験制度への移行で、試験名称が「テクニカルエンジニア(ネットワーク)」に改定される。
- 平成21年度以後
- 新試験制度への移行を契機に、試験名称が「ネットワークスペシャリスト試験」に戻り、その後現在に至る。
試験合格で受けられる優遇措置
合格、又は午前Ⅰで基準点以上を得ることで他の高度区分の午前Ⅰ試験が2年間免除されるほか、ネットワークスぺシャリスト試験は他の国家資格における科目免除や、職種によっては任用資格に設定されています。
- 弁理士試験の科目免除(理工Ⅴ[情報])
- 技術陸曹・海曹及び予備自衛官補(技能公募)の任用資格
- 警視庁特別捜査官など都道府県警察の4級職(警部補)のコンピュータ犯罪捜査官・ハイテク犯罪捜査官等の任用資格
- 中央省庁の4級職~6級職CIO補佐官(主査,課長補佐,班長,企画官,調査官)等の職員の任用資格
- 各独立行政法人の情報技術関連職員の任用資格
試験区分の略称は「NW」
ネットワークスペシャリスト試験の略称は平成6年の解説時から変わらず「NW」です。もちろんこれは「Network」のNとWからきているのでしょう。
さて、ここまでネットワークスペシャリストについて大まかに説明しましたが、試験制度の概要、難易度、合格率などの各種情報については当サイトのコンテンツに内容ごとまとめてあるので参考にしてみてください。